あなたは、メンヘラという言葉を聞いて、何を思うでしょうか?

「メンヘラ」という言葉で、「傷つきやすい人」を侮蔑するようなニュアンスで、
わかりきったかのように語る人が、私、月城ハオは大嫌いです。

人は、誰でも心の弱さを抱えています。

そして、「メンヘラ」であることは、人よりも多くの、心の弱さや痛みと向き合って生きているということなのです。

「メンヘラ」といえば、その代名詞として語られるのが、「ポエム」です。

そして、心理学的に言えば、「メンヘラがポエムを書く」というのは、実に適応的な行為です。

決して恥ずかしいことでも、くだらないことでもありません。

ねこが毛づくろいしたり、ねこがやわらかいクッションをふみふみするぐらい、
自然で、理にかなった、尊い行動なのです。

そして、メンヘラのポエムは、実に大いなる可能性を秘めています。

メンヘラのポエムは、心理療法のテクニックをいくつか組み合わせることで、最強のストレス対策へと進化するのです。

本記事では、「エクスプレッシブ・ライティング」と呼ばれる心理療法の手法を紹介し、メンタルを強化する方法について紹介します。

筆記療法とも呼ばれる「エクスプレッシブ・ライティング」は、ストレスを大きく低下させてくれます。

メンヘラではない人にも、日頃のストレスを軽減する、大きな力になってくれるでしょう。

そして、メンヘラにとっては、「エクスプレッシブ・ライティング」は、メンヘラの真の力を開花させるための第一歩となります。

メンヘラの人も、そうではない人も、
本記事で紹介する「エクスプレッシブ・ライティング」を実践すれば、簡単にストレスを軽減し、メンタルを強くすることができます。

メンヘラ女子のポエムに、一体どんな意味があるのだろうか

ところで、私たちが当たり前のように言っている、「メンヘラ」とは、そもそもなんでしょうか?

メンヘラとは、メンタルヘルスから派生した言葉であり、要は「情緒不安定になりやすい」パーソナリティのことです。

私たちは、メンヘラというと、どうしても否定的なイメージをもってしまいます。

しかし、情緒不安というのは、悪いことばかりではありません。

人は、心が揺れ動くときに、それと正しく向き合うことで大きな強さを手にし、かけがえのない人生の価値に気づくことができるからです。

中学生やメンヘラ女子がポエムのような日記を書くのも、決してくだらないことではありません。

心理学的に言えば、紙に書くことで、理性的な脳が活性化し、感情を整理しやすくなるのです。

また、それを応用した筆記療法と呼ばれる心理療法のテクニックがあります。

心理学の世界から見れば、自分の考えや価値観を紙に書き出すことは、「メンタル強化」を行うための常套手段です。

だから、メンヘラ女子のポエム日記はあながち間違いではなかったのです。

ただし、メンヘラ女子のポエムは自ら効果を半減させている点もあります。

やたらと感情をメンヘラポエムにしたところで、「焼け石に水」感があるのは否めません。

メンヘラがメンヘラたるゆえんは、そのメンタルの脆弱さだけではありません。

「認知の歪み」と呼ばれる現象に、心がのみこまれてしまっているからです。
(ちなみに、「認知の歪み」とは、中二病用語ではなく、精神医学で使われる立派な専門用語なので、あしからず)

よって、我々がメンヘラポエムの持つ真の力を開放し、メンタルを強化するためには、
心理学的な手法を取り入れて、進化させなければなりません。

メンヘラポエムは進化させることで、最強のストレス対策へと姿を変える

実のところ、メンヘラがいくら自分の感情をポエム調で書きなぐったところで、それだけでは焼け石に水です。

ところで、皆さんは、「メンヘラにポエム」ということわざをご存知でしょうか?

「メンヘラにポエム」というのは、日本のことわざではありませんが、
「どんな出来事にも適した受け止め方があり、受け止め方を間違えることで、身を滅ぼす」という意味のことわざです。

もともとは、「メンヘラにポエム」というのは、文化人を揶揄することわざでした。

世に名だたる詩人は、俗に言うメンヘラが多く、優れた詩を残すものの、不幸な人生を送ることが多いことから、皮肉の意味をこめて生まれたことわざです。

転じて、ネガティブな出来事や、目の前で起きた偶然を「過度にポエム化」することによって、かえって自分のメンタルを悪化させてしまうという現象を指すようになり、
「どんな出来事でも、受け止め方が重要」という意味になったとされます。

「過度なポエム化」とは、すなわち、目の前にある出来事を「とてつもなく運命的な出来事」として、とらえるということです。

つまり、人生で「よくあること」だったとしても、過度に理想的なこととしてとらえたり、過度に絶望的なこととしてとらえてしまうということです。

「メンヘラにポエム」ということわざは、我々がメンヘラポエムの能力を最大限に引き出して、メンタルを強化する上で、重要な教訓を得ることができます。

メンヘラに特有のポエムは、「事実を歪曲している」ために、効果が半減しているのです。

どんな出来事であったとしても、「自分は不幸な運命を背負って生まれてきた」ととらえれば、それは「事実の歪曲」です。

ところが、事実を歪曲することなく、目の前にある現実をあるがままに受け止め、
「確かに今は不幸な気分だ。でも、今の不幸な出来事を乗り越えることには、きっと意味があるはずだ」と、
とらえ直すことができれば、それは大きな力になります。

メンヘラが、優れた詩人になるか、それとも単なる精神障害者になるのかの差は、
「事実を歪曲することなく、受け止められるかどうか」にかかっているのです。

メンヘラは、繊細すぎるがゆえに、強すぎる感受性の豊かさによって、感情に振り回されてしまい、事実を歪曲してしまうのです。

そして、そんなメンヘラにとっては、事実を歪曲することが習慣になってしまっています。

そこで、メンヘラポエムを進化させる一番最初のステップは、「感情の可視化に専念する」ことです。

これは、「エクスプレッシブ・ライティング」と呼ばれる心理療法のテクニックを使用することによって可能になります。

ちなみに、今更ですが「メンヘラにポエム」ということわざは、私、月城ハオが今さっき考えたことわざです。

つい、勢いで作ってしまいました。
ごめんなさい。

本当は存在しないことわざですが、チエコイ.comではガンガン使うので、どうぞお気をつけください。

メンタルを強くするエクスプレッシブ・ライティングとは

エクスプレッシブ・ライティングとは、紙とペンを使う心理療法です。

1980年代にペネベーカーという心理学者が考案した心理療法であり、認知行動療法で使われるテクニックの一つです。

エクスプレッシブ・ライティングのやり方は、とてもシンプルです。

簡単に説明すると、
「自分が体験したネガティブな経験について、そのときに抱いた感情や思考を包み隠さず書き記す」のが、エクスプレッシブ・ライティングのやり方です。

驚くほどシンプルな方法ですが、様々な実証研究の結果、不安やストレスへの効果が認められている心理療法です。

簡単に、エクスプレッシブ・ライティングの効果について見ていきましょう。

エクスプレッシブ・ライティングの効果

エクスプレッシブ・ライティングを日常的に行うようにすると、数週間から数ヶ月でうつや不安が改善し、ストレスが穏やかになることがわかっています。

また、それだけでなく、認知機能が改善し、賢くなることもわかっています。

人は、日常的にストレスを抱えてしまうと、脳の「作業記憶」と呼ばれる領域がいっぱいになってしまい、慢性的に認知機能が低下してしまいます。

そこで、エクスプレッシブ・ライティングを行うと、ネガティブな感情が文字通り「棚卸し」されるので、ネガティブな感情の処理にあてていた分の「作業記憶」が開放されます。

その結果として、認知機能が改善し、頭が良くなるのです。

しかし、ただ単に「ネガティブな感情を紙に書き出す」という非常にシンプルな行動が、
なぜそれほどまで強力にネガティブな感情を抑える効果があるのでしょうか?

エクスプレッシブ・ライティングを行うことで、ネガティブな感情を抑えられる理由

エクスプレッシブ・ライティングによって、ネガティブな感情を抑えられる理由について知っておくと、その効果を活かしやすくなります。

まず、一点目として「感情を可視化する」ことで、ネガティブな感情にとらわれにくくなるからです。

人は、脅威の正体が不明なときにこそ、強い不安と警戒心を持つように進化してきました。

例えば、なにかわからない物音が聞こえるというとき、人は強いストレスを感じます。

その物音が、外敵によるものなのか、それとも無害な環境音なのかを見極めなければ、あっさりと命を危険にさらしてしまうことになるからです。

ですから、ストレスとは本来、「どの程度の脅威なのかがわからない」から、大きなストレスとして感じられるのです。

そして、人間の不安感情についても同じことが言えます。

感情を「可視化する」とは、自分が「何に対して」、「どんな感情」を「どれくらい」抱いているのかを明確にするということです。

感情が可視化できた時点で、ネガティブな感情の正体が明確になると、それはもはや脅威ではなくなってしまうのです。

また、二点目にエクスプレッシブ・ライティングが効果的な理由としては、前頭前皮質という脳領域が活性化されるからです。

前頭前皮質とは、人間の理性的な認知活動をつかさどる脳領域であり、この前頭前皮質の働きによって、感情をコントロールしています。

人間はネガティブな感情を感じているときは、扁桃体という領域が活性化しますが、前頭前皮質は、扁桃体が活動(=ネガティブな感情)を抑えるように指示を出す司令塔のような働きをしているのです。

前頭前皮質は、言語能力や手先の細かい微細運動と密接に関わっています。

感情を「言葉にして」「紙に書く」というのは、どちらも、感情をコントロールする「前頭前皮質」を強力に刺激することになるのです。

ちなみに、ある研究では、ネガティブな経験を「人に話す」よりも「紙に書く」ほうが、ストレスを軽減させる効果が高かったという結果が出ました。

これは、「紙に書く」という行動のほうが、前頭前皮質をより強力に活性化させるからだと考えることができます。

エクスプレッシブ・ライティングのやり方

では、エクスプレッシブ・ライティングの具体的なやり方について見ていきましょう。

繰り返しますが、
「自分が体験したネガティブな経験について、そのときに抱いた感情や思考を包み隠さず書き記す」というのが、エクスプレッシブ・ライティングです。

ただし、エクスプレッシブ・ライティングにも正式なやり方があります。

エクスプレッシブ・ライティングを行うコツとして、以下の3つを心がけてください。

  • 20分間ノンストップで紙に書きなぐる
  • 最低4日間は続ける
  • 慣れたら、悩みを展開する

それぞれ、順番に見ていきましょう。

20分間ノンストップで紙に書きなぐる

エクスプレッシブ・ライティングでは、20分間時間を決めて、紙にかきなぐることが基本です。

このときに、誤字脱字は気にせず、ノンストップでひたすら書き続けてください。

前頭前皮質が作動するには、「言語化する」「筆記する」という作業に一定時間集中する必要があるためです。

「あれを書こうか」「これを書こうか」と迷ってしまうと、集中力が分散して、前頭前皮質の機能が強化されないため、効果が落ちてしまいます。

最初は長く感じるかもしれませんが、20分間の間、「書く」という作業に集中することが重要です。

なお、理想は20分間ですが、難しいようでしたら、最初は短い時間でやってもかまいません。

ただし、時間を決めて集中することだけは、なるべく心がけてください。

最低4日間は続ける

多くの研究によれば、エクスプレッシブ・ライティングは、最低でも4日連続で自分の感情を書き続けないと、効果が薄れてしまうようです。

筋トレと一緒で、感情を言語化して、ネガティブな感情を棚卸しする能力も、鍛える必要があるのです。

また、暴露療法というトラウマの克服に使われる方法と一緒で、ネガティブな感情に繰り返し接することで、ネガティブな感情に「慣れる」(=ストレスを低下させる)という効果もあります。

エクスプレッシブ・ライティングを実践する時間は、仕事が終わった直後や、寝る前がベストです。

最初はめんどくさいと感じるかもしれませんが、習慣化に成功したときの効果はすさまじいので、がんばってみましょう。

慣れたら、悩みを展開する

エクスプレッシブ・ライティングに慣れてきたら、「悩みを展開する」という作業を取り入れていきます。

まずは、そのストレスフルな出来事が「自分の人生に与える影響」に目を向けるようにしてみてください。

例えば、以下のように自分に問いかけてみます.

  • この出来事は、家族や友人にどんな影響を与えるだろうか?
  • この出来事は、自分の過去と未来にどうつながるだろうか?

つまり、自身のネガティブな感情を掘り下げることで、そこに「気づき」を得られるようにしていくのです。

そして、これこそが、メンヘラポエムの真の力を引き出す奥義なのです。

メンヘラポエムは、さらに進化する…!

さて、以上までで、「エクスプレッシブ・ライティング」の具体的なやり方について説明してきました。

エクスプレッシブ・ライティングは、ストレスを大きく軽減し、認知機能を改善するほどの強力な心理テクニックです。

エクスプレッシブ・ライティングを続けることで、性格がポジティブになるという研究もあるほどです。

ところで、エクスプレッシブ・ライティングを習得するだけでは、メンヘラポエムの真の力を完全に引き出すことはできません。

実のところ、病んでいるとしか思えないメンヘラポエムにもいいところは、あるのです。

それは、自分の目の前にある物事について、なにか特別な意味を見出そうとすることです。

しかし、メンヘラは、2つの能力が劣っているために、本来持っている力を引き出せていません。

1つ目は、「感情を統御する能力」です。

メンヘラは、ネガティブな感情に囚われてしまうために、目の前にある出来事に対し、「ネガティブな方向」にしか、特別な意味を見いだせなくなってしまっています。

そこで、本記事で紹介したエクスプレッシブ・ライティングが、不安感情を抑え、感情をコントロールする能力を高くしてくれます。

2つ目は、出来事を客観視する能力です。

メンヘラは、出来事を過度に自分事化してしまい、客観視することが難しいです。

感情を客観的にとらえることができても、「事実を歪曲する」という認知の歪みを修正しなければ、結局は「メンヘラにポエム」なのです。

「メンヘラにポエム」という、月城ハオのことわざは「どんな出来事にも適した受け止め方があり、受け止め方を間違えることで、身を滅ぼす」という意味です。

この「適した受け止め方」を、強化するためには、出来事を客観視して達観視する「ジェネリック・ユー」というテクニックを取り入れる必要があります。

次回の記事では、エクスプレッシブ・ライティングの効果を高める「ジェネリック・ユー」というテクニックを使うことで、出来事を客観的にとらえる方法を紹介します。

結論:メンヘラだからこそ、強くなれる

以上、メンヘラポエムをさらに強化する「エクスプレッシブ・ライティング」の方法について紹介してきました。

エクスプレッシブ・ライティングは、非常に効果的な心理療法のテクニックですので、メンヘラじゃない人も、ストレス対策として、是非取り入れてほしいです。

軽くおさらいしておきます。

エクスプレッシブ・ライティングの効果

  • 感情を棚卸しすることで、認知機能を改善する
  • 感情を可視化することで、ネガティブな感情にとらわれにくくなる
  • 前頭前皮質を活発にすることで、感情をコントロールしやすくなる
エクスプレッシブ・ライティングのやり方

  • 20分間ノンストップで紙に書きなぐる
  • 最低4日間は続ける
  • 慣れたら、悩みを展開する

そして、メンヘラポエムは、さらに進化します。

まだ、本来の能力を発揮できるようになるには、本記事で紹介したエクスプレッシブ・ライティングに加えて、さらに2段階の進化を控えています。

最後に、この記事では、メンヘラポエムなどと、揶揄するように聞こえる言葉を使ってきましたが、私、月城ハオは「メンヘラ」に対して、敬意や親しみの感情を持っています。

心に痛みを抱えやすい人は、その人にしか手にできない強さがあるのです。

決して、弱い人間などではありません。
その力の使い方を知らず、それゆえに不安定なだけです。

心に抱えた過去の傷があるからこそ、その人にしか見いだせない明日があります。

過去の傷を持たないやつなんて、いません。
いたとしたら、そいつが薄っぺらなやつなだけです。

本当の力を手にするまで、道のりは長いです。

まずは本記事の「エクスプレッシブ・ライティング」を着実に身につけるよう、がんばってみてください!